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第二話『人は人によって人となる』

我々人間が言葉を用い、複雑な思考を行ない、豊かな感情を持つのは、決して生得的なものではなく放っておいてもそのような資質が自然に発生する事はないとされている。人間の精神的発達は、幼児期の環境に大きく影響され、人間的な発達には、幼児期において人間的な環境から習得される必要があり、幼児期に確立された精神的発達の基礎は、その後の発達に影響すると言われている。([4]山下富美代著『発達心理学』p.168 )

それらを後に矯正することは困難であると言われている。狼少年に限らず、幼児期に動物からアイデンティティーを受け継いだ子供を社会復帰させる努力が試みられた科学的な事例があるが、完全な復帰は困難であることが確認されている。

人間から生まれると、皆心身ともに人間として育つのではないようです。自分の意思ではなく、親祖先の日本人としてのDNAを受け継ぎ、日本の国柄の環境で育って日本語を話し習慣を身につけた事は、大部分は自分の努力以上に環境感化によって人柄にインプットされたように思います。

私達の人生を成り立たせ、影響を与える要因として、①遺伝と家庭環境、②自然の環境、③社会的、文化的環境、④各自の心づかいと行い があります。

①〜③は制約的な要因で簡単に取り替えられない。しかし、④の各自の心づかいと行いは、変えられる。考えが変わると心が変わる、心が変われば人生が変わる。生まれて成人するにつけ自分の人生を心身豊かに過ごす為には、モラロジー※のように「正しい事を正しく学び正しく実行」する事が必要であると廣池千九郎先生が遺されています。ここで大切な事は、一人学ぶのではなく、人生の師を求め、感化を受けるという事です。

“人間はまことに不思議な存在で、磨けば磨くほど光るものである。 平澤興(京都大学元総長)”

“人間は一人で大きくなったのではない。会社もまた一人で大きくなったのではない。慌ただしい日々の中にも、ときに過去を振り返って、世と人の多くの恵みに感謝する心を、お互いに持ちたい。その心こそが明日の歩みの真の力になるだろう。 松下幸之助(松下電器産業創業者/経営の神様)”

こう考えていくと、自分が全てと考える前に、大自然の恵みや命の連携の中に生かされて生きている事に思いを馳せ、まずは感謝の心を育みたいものです。(つづく)

※モラロジー=廣池千九郎(1866〜1938)が創建した、人類の生存、発達、安心、平和、幸福の実現をめざす「総合人間学」