■ファシリテーションを理解する

いや~、びっくりした。

えっ、何があったのかって?勉強会前に、企画メンバーにファシリテーションの書籍を事前に呼んでおくよう伝えて、日曜日10時から勉強会をスタートしようと通知しておいたのだが、当日に本を持っていたのは企画メンバーリーダーの矢板君と第二イベント担当の俣野君だけ。

さすがにイラッときてしまい、その場で本屋に行って本を買ってくるよう指示してしまったよ。勉強会場の横浜駅からみなとみらい駅の書店まで行って探してきてくれたのはありがたいが、そのせいで2時間も時間が割かれてしまった。もう少し強く伝えたほうがよかったのかな……?

と、人のことは言うものの、勉強会前日まで、俺自身も人前で説明できる程の理解をしていない状態で、果たしてメンバーにどんな説明ができるのだろう?、と準備が終わっていない状況でいろいろ不安にもなってきてしまっていたよな。ところが、会社がある虎ノ門駅から自宅があるみなとみらい駅への帰宅時、通勤電車の中で悩みながら、雑誌を読んでいると、あるアイデアが浮かんできた。そのアイデアとは、その場で本を読んでもらい、その内容をみんなでまとめてもらうのがよいのではと思ったこと。では、これを参加者の自発的な行動にしていくにはどのようにしたらよいかと出てきたのが以下の通り。

○当日限られた時間でも本の内容を理解できるよう、本の読み方を知ってもらうようにする。
○当日限られた時間でもファシリテーションのポイントをまとめられるよう、事前に記入用紙(フォーマット)を用意する。

雑誌に、本の読み方のコツは最初からじっくり読み始めるよりも、目次やページタイトル、小見出しなどをざっくりと読み、本全体の構成をまず理解すると体系的に内容を把握できると書いてあったなあ。限られた時間の中で本を読み中身の理解を深めてもらうために、まずはこれを実践してもらおう。

参加者自身が本を読み終わったあと、自分が理解できた内容をすぐに書き始められるよう、本に書かれているキーワードを書き出した記入用紙(フォーマット)を用意しておこう。次に二人組みのペアになって記入用紙を見比べ、自分の理解や相手の記入用紙から自分が気のつかなかったことについて意見交換をしてもらったらさらに自分で学んだことの理解が深まり、いいかもしれない。

勉強会が始まった当初は若干重たい雰囲気だったけど、自発的に勉強していくスタイルにしたことで、最後は意見が活発になり、最後は全員の理解を1枚の記入用紙にまとめて、その日の勉強会をクローズすることができた。岸辺君は勉強会前からものすごく本を読み込んでいて、記入用紙もしっかり埋まっていたな。それで、まとまった内容が「原稿その2補足」の通り。結果オーライとなってしまったけど、これってファシリテーションの仕組みに近いんじゃない?

ファシリテーションに必要なスキルは大きく分けて以下の4つになります。
1) 場のデザインのスキル
2) 構造化のスキル
3) 対人関係のスキル
4) 合意形成のスキル

詳しくは参加者みんなでまとめた内容をご参照ください。

~ご一読いただいた皆様へ~
加藤正好や企画メンバーの活動記録を通じて、ファシリテーションにご理解をいただければ幸いです。尚、このプロローグにあるお話はフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。

■場のデザインのスキル
①ファシリテータは知的相互作用の場づくりを行うこと
場づくりでは、目的、目標、規範、進行、参加者の五つの要素を考える
「目的」とは「集団は何をめざして活動するのか」という「方向性」を決めること。
「目標」とは「具体的な到達点」を決めること。
「規範」とは「集団の行動指針」を決めること。進行を妨げる人への対処にもなる。
「進行」とは「集団活動の段取りを設計」すること。
「参加者」とは「目的にふさわしい参加者を選定」すること。利害関係者も必須。

②ファシリテータは活動の進行設計を行う
「起承転結」型のプロセスが基本。
「起」では「アイスブレイク」を使って、参加者の心や体の緊張を解く。
「承」では「目標」に対する思いや疑問を参加者同士で素直に出し合う。
「転」では「承」で出てきた意見を、創造的なものへまとめていく。
「結」では個人では到達できない新しいアイデアを生み出し、成果をまとめて
次の行動を考え、最後に活動を振り返る。

その他、「発散・収束」/「対話と議論」/「問題解決」/「体験学習」型プロセスなど。

場のデザインに参加者を参画させるのがもっとも効果的だが、いつまでも入り口の 議論を続けるのも考えものなので、ある程度進めてからもう一度見直してみてもよい。

■構造化のスキル
収束に向け意見を集約しようにも、そもそも議論になっていないケースがあり、 正しく議論がかみ合うようファシリテータが「橋渡しをする」必要がある。 発言は論理の3点セットで行う必要がある。
①話の前提となる知識
②根拠(理由)
3)主張したい結論ロジックツリーなどのフレームワークを使って、発言を表現的及び視覚的に 整理してポイントをわかりやすく言い換える。ファシリテータはあくまでも足りない部分に気づかせ、自発的に補うように促す。

■対人関係のスキル
①聴力; もっとも重要なのは「傾聴」で耳で聞かず、心で聴く。苦手な相手や反対意見でも 「よい点を見つけよう」「ためになることがあるはずだ」と思って聴くことで、安心して 自己の意見が表明できる場をつくる基礎ができる。
②訊く力(尋ねる、問うことを意味し、常用漢字表にない読み方); その他、「復唱する」「同調する」「開いた質問をする」、「前向きな方向に思考を 向けさせる質問をする」「自分は鏡になって他の参加者に質問を投げ返す」などがある。 *「開いた質問をする」⇔「閉じた質問をする」
③観る力; 参加者の「口調、表情、態度」の三つの「非言語メッセージ」に注目する。 聴く力と見る力で場の空気を読むことで、進行に納得しているか、内容に満足している か、ファシリテータを信頼しているかを知る。わからなければ参加者に素直に聞くもあり。
④ファシリテータは「要約と言い換えで参加者の橋渡し」をする。 発言を「わかりやすい形」に表現しなおしたり、「他のメンバーの発言を促す」こと。 「他の参加者の発言を促す」には質問を使って仮説として意見を提示するのが望ましい。 質問を使って意見を伝える場合は「閉じた質問」より、「開いた質問」がよい。

■合意形成のスキル
①評価・点数など、「何らかの基準に基づいて評価し、最良のものを選択」する。 ⇔功利的な観点で選ぶのであればファシリテータがいなくても意思決定ができる かもしれないため、多少見劣りするアイデアでも集団が本気になって取り組めば 思わぬ効果が得られるもの。
②ビジネスではなじみがないが、「多数決」や「多重選択法」で選択する。
③「参加者全員が支持できる案を集団全体で作り出して」いく。
活動から得た気づきを確かめ合い、その意味を考え、次の行動へと結びつけてこそ、 学習を定着することができる。