第一話『命の重さ』
先日の相模原での殺傷事件などを考えるとき、最近はいのちの重さを軽視する傾向があるように思います。しかし、私達のいのちとは、地球上に生命が誕生して38億年絶えることなく進化発展し、大いなる自然の営みと宇宙自然の働きにより、母の胎内で10月10日の間に小さな命の元から細胞分裂し、さらには母の命がけの働きによって「許されて誕生した命」、また「選ばれて与えられた命」でもあり、実に奇蹟的な出来事であります。そのような貴重な命を簡単に傷つけ、殺してしまうというのは、全く命の重さを学んでいないように思います。
一方、あらゆる環境で生まれた人々が「共生、共苦」でありたいと思う現代、ある時、パラリンピックの選手やそれを応援する人々に「凄いね!ハンディをものともしないで頑張るのは!」と言った時、「それは違いますよ、あの人達は、残された能力を使い、競うのです」と言われ、恥ずかしい思いをした事がありました。
東大教授の福島智さんは、9歳で失明、18歳で聴力を失って、失意のうちにいたところ、ひとりの友人が、彼の掌に「思索は、君の為にある」と、彼に残されたものや新たな意味を帯びて立ち現れるもの、すなわち「言葉と思索」の世界をさりげなく示してくれた。(致知:「ぼくの命は言葉とともにある」参照)同じ人間として言葉をかけてもらったおかげで、福島さんは、東大教授として、今日国際的に活躍されている。
冒頭に述べた命の奇蹟を思う時、共に生きる心、自分の命の尊さと共に他の人の命も尊い事を日々思う事が人生を豊かにしてくれます。(続く)