《プロローグ》
いやいや、この後に及んで面倒なお役目を引き受けることになったなあ。俺は加藤正好。来年46歳になる、普通のサラリーマンだ。

あ、役職は課長。輸入販売商社「ジャンパー通商」の第三営業部に勤務している。週末、とある教育団体で開催予定の若手を対象にした勉強会の企画に顔を出している。顔を出しているという意味だが、この団体では40歳までを若手としており、俺はオーバーエイジ(年齢制限を越えている)なので、企画メンバーとしての参加ではなく、オブザーバーとして参加しているということである。

今回、この団体の勉強会の企画では参加者にリーダーシップを身に着けることを目的としており、ふさわしい勉強を模索していたところ、「ファシリテーション」なるものにめぐり合ったようだ。だが、企画メンバーの誰もどんなものなのかわからず、皆で一から勉強することを決めたのだが、なかなか理解が深まらないため、企画統括の村井部長から俺が教育係として白羽の矢を立てられてしまった。

部長は前回の勉強会でリーダー的立場として、前回勉強会を成功に導いたやる気が体からあふれ出している精神的支柱のような人間だ。しかしながら、いまだ企画メンバーのリーダー気分で自分の意見を出しすぎてしまうところもあり、統括としての立場から企画推進することに難航しているもよう。部長の依頼は一度断ってもしつこく電話がかかってくるので、まずはやってみますとだけ言っておこうか。 村井部長を紹介したので、これから一緒に勉強していく企画メンバーも紹介しておく。

矢板純(27歳)企画メンバーリーダー;頭脳明晰で一流企業の開発部門に勤務しているが、毎日激務の仕事の合間を縫ってお役目を担っているため、教育係として時間を割くことは出来ないと断りを入れてきた。

岸辺信二(36歳)企画メンバー総務担当;広告宣伝の仕事をしていて、デザインセンスは抜群だが、熱い男でつい自分の意見を言い過ぎてしまうところが残念。
竹田武蔵(40歳)企画メンバー第一イベント担当;自動車関連部品を製造する自営業に勤める。生産管理担当で営業もこなす24時間働けるタフなやつだが、何でも自分でやってしまうのでいつも忙しそう。
俣野貴久(40歳)企画メンバー第二イベント担当;彼も自営業に勤めるが、こちらは鍼灸治療院。経営面でオーナーの父を支え、誰でも友達にしてしまうカリスマ的存在だが、事務作業面で少々雑なところがある。
伊澤優(34歳)企画メンバー懇親会ディナー担当;水道局に勤務する。仕事の関係上、夜勤もこなさなくてはならず参加は不定期だが、富士山を2往復出来るほどのスタミナを持つ。もう少し積極性があったらなあ。 と、少し俺の主観が入っていて、当人にバレたら首を絞められそうだ。教育係なんてめんどくさい。みんな本でも読んで自分で学んでくれないかな。あ~あ、勉強会本番まであと8ヶ月しかないのに…。

『ファシリテーション』とは
ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまく物事が運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。その役割を担う人をファシリテーター(facilitator)と呼び、会議で言えば進行役にあたります。

ファシリテーターは活動の進行に関わるファシリテーターは集団活動の二つの進行に関わっていきます。会議で言えば議事進行といった、活動を計画的に進めるための形式的な進行です。もうひとつは参加者一人ひとりの心の中にある考えや気持ちを前向きなものにしていく、心の内面性を進行させるものです。特に心の内面性を進行させることが重要で、具体的にはファシリテーター自身及び参加者が傾聴すること、復唱すること、質問を通して発言に対して深堀することです。これらの具体的な行動を通じて集団の心の内面性が進行され、参加者の集団意識及び相互理解を深めることが出来ます。

~ご一読いただいた皆様へ~
今後、加藤正好や企画メンバーの活動記録を通じて、ファシリテーションにご理解をいただければ幸いです。尚、このプロローグにあるお話はフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。